No.676

それはきみを弱らせるもの
香ばしくて甘い
艶々とみずみずしい
それなのにきみを弱らせるもの

嘘のように聞こえるだろう
だけどいつか気づくはず
ぼくが必死だったこと
三原色の透明部分にかくした暗号

朝がいつまでも続かないように
夜道でも前へ進めるように
泥だらけでも立ち直れるように
星を見つけられず途方にくれないように

屋上からふっと消えないように
線路の向こうに砂浜を見ないように
視線を恐れてどこにも行けなくなる前に
鉄格子の指先から力が抜けないように

信じなくてもいい
分からなくてもいい
正しくなくても選べるということ
きみがやがて教わることだ

空には境目がないのだから
きみがきみを許すことにも理由は要らない
雨があがったらきっと伝える
きみにぼくと生きていて欲しい