No.675

殺せるはずがないと思ってた
殺されるはずもないと思ってた
思ってたからこそ無意識だった
あと少しできみを死なせるところだった

ふるい日記帳を読み返してみれば
遠いはずの記憶はずっと近くて
消えるものはないと知った
消えたと思うものがあったとしても

きみを、だいじにできている?
鏡の中にそう問いかける
もう、離れて行ったりしない?
自分を棚に上げてそう懇願する

問いかけとは懇願だ
回答者を縛り付けることができる
ずるい手だと自分でも思う
でも我慢はやめたんだ

決意するまで時間を要した
うすうす感づいていたくせに
きみはずっと寝たふりをして
ぼくが目覚めるのを待ってたんだね

あまりに白いシーツの上
投げ出された手のひらに
四つ葉を編んだ指輪をあげる
今度はぼくが、むかえにいくね。