No.646

守ってあげたい。と思っていた、守ってあげられる。と思っていた。きみの何気ない言葉がぼくに、あやふやじゃない現実を突きつけるまでは。いつでも優しくて強かった。知ってるのはもうぼくだけじゃなかった。巻き戻せたらなんて言おう。巻き戻せたらどう振る舞おう。そんなこと考えるんだ。そんなことしか考えられないでいるんだ。素直になんかなれない。本音は永遠に語らない。知らないんだ。要求するなんて、知らないんだね。本音がどれだけ汚いかってことを。消えればいいって思ってる。きみを好きなあの子も、ぼくを好きじゃなかったきみも。日常を送るこの街も、そこそこ平和な何もかも。無関係なものだって今じゃ観衆に見えるんだ。笑ってるんだ。安心してるんだ。今回も異物は排除されそうね。そうだろ、残って欲しくないなって思ってる。だからカラーセロハンを重ねてく。照りつける太陽をにらんでる。境界がぼやけるまで。涙が蒸発してしまうまで。逃げて、逃げて、今のうちにぼくから逃げて。きみを好きでいられる魔法がとける前に。ぼくがかけた魔法がとける前に。魔法よ、魔法よ、ぼくを化け物へもどさないで。きみはあの子を連れて逃げて。