欲しくない。伝わってるよと言って欲しくない。僕が嘘を言わなくても。正しく伝わった、そう感じた瞬間に、取り返しがつかないほど、僕らの時間は巻き戻される。そのくせ全部覚えてる。上書きされて真っ暗なキャンバス、どんな色がどれだけ積み上げられて、何が隠されたかも覚えてる。ときどき思うんだ。ずっと夢だと思ってる、だけどここが現実なんじゃないかって。もう少しで届きそう。もう少しで見つかりそう。自惚れた途端、空から星が落ちてきて、また真っ暗になるんだ。やむなく次の光を待ってるんだ。足元で砕けた破片は皮膚を切り裂いたかも知れない。血は赤いんだろうか。命は尊いものだろうか。それだって確かめることができない。できないでいる、解けない謎くらい、ここに残したいから。叫ばないでも、君には気づいて欲しいから。