No.639

さようなら、また来ようね。コンビニのあかりは小説に閉じ込められて、まだ誰も知らない文明が開花する。連続した凶行も語られなかった美談もいっしょくたにされて、一節は流れ込む、さらに大きな流れの中へ、だけどたしかにここにいたよ、ぼくたち、生きている体から血を流して、死んだ体から流れる血を眺めて、うつろう景色に目を細めて、愛する代わりに呪って、名前も忘れて褒め合ったんだ、先に死なれないように、だってずるいから。正しいものがないことだけが絶対なんだよ、疑わなくていいことなんだよ。そうささやいたあなたの声も、残念ながら紛い物。だとしても、不都合は見当たらない。あなたを傷つける奴はこれからも現れるだろう、優しい声をして、ありふれた善意を見せて。ぼくは自分を大切にできないから、決めたんだ、あなたを守るって、そばにいよう、見えない銃弾がここで止まるように。狙撃手の落胆する顔が見たいな。夢でもいい、夢のほうがいい、みんなに愛されるあなたなんか、ぼくに愛される価値はないんだ。無理矢理に笑顔など浮かべなくても大丈夫、生まれ変われないものはないから。ぼくは次回は言葉を持たないものとして存在がしたい。あなたが安心して暗闇を打ち明けられるよう、夜よりもっと深い青で包みたい。人の知らない沈黙のとなりで、誰も知らない文明のはざまで、あたかもあなたが望んだ世界の最低辺で。