No.633

認めたくない。だけど言わせてやんなきゃ。幸せでないあなたが好き。これからも好きでいさせてほしい。かわいそうなあなたでいてほしい。ぼくが悪さをしなくて済むように。新月の夜、なまあたたかい肉のにおいだ。花の香りと、踏みにじられた茎のにおいだ。傷を数えている。ひとつでも消えていたら困るんだ。そう、傷には名前をつけている。あなただって星には名前をつけるだろ?かんたんに覚えておけるように。物語にさえなれば消えていかない。みんなが勝手に話し伝えるから。当てようか。あなたは消えることを恐れてる。ふたりの利害が一致したんだ。それだけだから、他の名前で呼ぶのはやめておこう。完成しないパズルをつくってる。完成しないとわかってるから今もまだ人でいられる。これ以上近づいたら、生まれ変わってしまう気がするんだ。そしたらもう二度と、会えないような気がするんだ。嫌だと思う。辛いだろうと推測できる。何が成就しなくてもいい、何かが朽ちて廃れてもいい。一言も交わさないで、夢の中では笑い合ってる。だから体温なんていらない、都合のいい夜ばかりが待ち遠しい。

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