No.627

青いものが果たしたもの。赤いものが運ぶもの。あなたがまぶたをひらくたびに、羅列をひとつはめていこう。パズルのピースが足りなくなる前に、ぼくが何もかもを忘れる前に。この世界にはすみっこがなくて、ひとりで泣くこともできないんだ。それならぼくが隠してあげよう。あなたの名前を奪ってあげよう。死にたい欲求を誰にも悟られずに、手品のように消してあげよう。思い立ったら花を手向けよう。何も知らないひとがそんな姿を見て涙を流すだろう。うつくしいね。かなしかったろうね。ぼくは微笑むために俯いてしまう。光景はちぐはぐでも、流れる涙はほんものだ。意思の断絶がなければ、こぼれなかった。おなじ命、わかりあえないことは、それほど悪いことじゃないよ。春が来る。あなたに一度も愛されなかった、どうしようもない季節のことだ。