No.623

きみの手はもう痛まないだろう
柔らかな雪の上で爆薬を詰めないから
記憶を白黒で思い起こしたり
子どもの笑い声に苛まれることもない

隔たりは茎によって崩されたんだ
とたんに言葉が行き来を始めて
別れなんてどこにも無かったみたいだよ
そしてそれを幸せだと言う人もいるんだ

あの日もそうだったように
キッチンには甘い湯気が立っている
用意されたガラスの瓶に
七色の光が溜まっていく

忘れないように忘れないように
生きていきたいんだけれど
遠ざかって遠ざかってく
きみの手は真っ白だね

きみは知らないでしょう
だってぼくも知らないんだ
それだけがほんとう
隠したがった真相は腐りゆくジャムの中