No.621

夕闇も朝焼けも蜂蜜の瓶に詰めて
変わり過ぎた窓の外を見る
このガラスは決して割れないはずだけど
誰も信じられず四歩遠ざかった

恋人たちは愛ばかりして
たまに脇目をふったりする
視界に入るぼくにはまだ色がないので
安心したって声が聞こえて視線を外す

誰かの幸福が誰かの孤独の上にあって
誰かの涙が誰かの火照った体に落ちて
誰かのいとしい人がぼくには厄介で
誰にも害を与えず風船になって割れたい

苗床にもなれなくていい
肥料にはなるだろうけど
ぼくが溶けた土にこの世の花が咲くだろう
保存されない種には澄んだ風が寄り添うだろう