no.96

話していないことがたくさんある
いつかいつかと先延ばしにして
ずっとそのままにしてあることが

明日降る雨のにおいがわかるの
きみが生まれる前を知っているの

気配の中でふたり
ふたり揃わない呼吸をしていた

先に出て行った方が負けだよ
よかったね、きっと
そんなわかりやすいルールなら
誰にも伝わりやすい関係なら

ぼくを透かして見るきみの世界
染まりきった一日
終わりの選べる毎日
白い貝殻に悲鳴を閉じ込めて

きもちのいいことだけで埋め尽くしたい
それはきみにとっては
だけど地獄かもしれない
そういうことなんだ

素直になるよう強いることは
そういう極論を許すかもしれなかったと
理解はできても悔やみ切れないよう
そんな形でさえここに何か残りますよう

いくつも声を閉じ込めて
貝を波へ放つとしよう
響きのない静かな暗さの中で
もう一度ぼくを名づけてみるなら

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