no.95

数えるのをやめたのはいつだったか
それさえも遠い昔のようで覚えていない
しあわせなぼくたちの消し方
何度も手を伸ばしてはそこで終わった

遠く離れた肉親の近況より
毎日見ているブログの作者の愛猫が
きのう死んでしまったことが哀しい
誰に冷たいと言えるだろう

通り雨の訪れを知って飛び出した
それが猛毒であるという妄想のもとに
安全な場所から欲するばかり
本当は何が欲しいのか分かることはない

ひたむきさは必ずしも必要ではないんだ
汚い手でもちゃんと掴むひとだっている
綺麗事しか言えない口に期待はいらない
無責任な崇拝もほんとうはいらない

光の入り込む余地もない
大きくて平らな瞳
映し出すものを知られたくなくて
そんなにも誰からも隔たっているんだね

転校初日の校舎の壁の色
また明日くるかもしれない風の匂い
新しいというものはどこにもなく
古いものの集まりの中で切り込んでいく

夢や幻に向かって歩いて
その通りにならなかったとして
責めたい彼等はどこにも見当たらない
既に追憶のはるかへ置き去りにした

時効だけ頼りにして優しいんだよ
そんなにも睨むのではないよ
誰も強くなかった
それに気づいたというだけのことじゃないか