No.615

何回も言って
安心しないで
平和なんかない
絶対なんかない

いつまでもあるなんて思わないで
いま、いま、この一瞬を
焼き付けるように見つめておいて
よそ見してる暇なんかないだろう

帽子が飛んだ
鳥が撃ち落とされた
木の葉が擦れて音を立てた
赤ん坊が笑った

(いま、)

波しぶきが上がった
ページをめくった
髪に新芽が絡まった
卵焼きが上手に焼けた

(いま、いま、)

体温計が壊れた
切手を新しく買った
カレンダーを見た
昔の名前を忘れたふりした

(いま、いま、いま、)

退屈な駆け引きを捨てて
邪魔な秘密をほどいて
心臓にストローを突き立てて
僕に足りないものを流し込んで

(さあ、今)。