No.607

涙より血を
何度も要求した
壁を正視できなくて
あふれる色を止めた

胃袋が鳴っている
愛を食べた
それは少し腐っていた
食べなきゃ良かった

冷蔵庫にそれしかなかった
お金もなくて
あとは冷えたスプーンと
動物の舌

一日中川を眺めている
いろんなものが流れている
広告やサンダルや骨
鉄骨や毒や三角巾

誰が住んでいますか
誰が何を失って
ああ、あれは
消失したリボンではないのですか

振り払った一瞬は
少しだけ優しかった
お互い期待していた
演技だとわかっていた

夢なら覚めるのにな
そう思うのは勝手だ
覚めない夢だってあるさ
終わらない現実があるように

妄信せずに生きられない
ぬくもりが牙を剥く
不釣り合いな信頼
川は、とどまる勇気をいまだ持てない。