no.93

一日の終わりに
切り取られていく
思い出が
直線の屋根と屋根が

まるでなかったような記憶
昆虫の羽根を透かして
覗きみるときに
むこう側からもこちらをみていた

なにも無くさなかったような顔で
お互いに名前を知らない
顔も見知らない
すれ違うだけだったひとびと

得意だったこと
好きだったこと
後ろも前も
上も左もない軽い世界で

幸せを語るとき
ほんとうはもう終わっていたんだ
大切なものに順序はないけれど
いちばん手放し難い季節は

挑むこともないであろう
山のいただきへ
行き着くことはないであろう
遠い星の光で

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