No.576

時間をかけて死んでいく
笑ったり泣いたり
体調を崩したり
そして持ち直したりしてさ

まぶたの向こうにきらめく
目を開けている時より暖かい
止まった時間はぼくの
永遠にぼくだけのもの

いつか並んで見た映画
こっそりハサミで切り刻んだ
あのシーンがちらついている
繋ぎ止めようとする

得体の知れない
知ろうとしない
罪のあるもの
分かり合えなかった罰で

溶け合うのは簡単
なので肌がつくられた
ずっと昔の胎内で
葛藤のための輪郭が

そして生まれた
まろやかな薬品の匂い
脱脂綿の陰から見る空
赤でも青でもない、あれが本当の空。