深夜のバス停
冷たい手を握ってる
この命が終わる時
瞬間を逃さないでいられればな
生きるって何かと物騒だね
髪に残る光跡がぼやけていく
ただそれを見ている
知らない言語を判読するように
何本かやり過ごした
ふと時計を見そうになって
袖口を引っ張った
あなたの頬は赤くならない
他人が網のように二人を追い込む
しかし目をくぐって逃げ出せる
先のことなんか考えないで
百年後に後悔するのかも
ぼくたちは考える
何をか教え合うことはしないくせに
考えてるってことを隠したりしない
そのせいで会話は少ない
殺すというのも一つの手だよな
間違った考えは優しくて
まるで正しい
たったひとつ浮かぶ灯のよう
もしどちらかが口にしたって
どちらにも正すことはできないだろう
こんなに途方に暮れているんだもの
こんなにも純粋であるんだもの
砕かれても星になったりしない
雪になって毎年降ることもない
埋め尽くすことも覆うこともできない
何よりそしてもう会えない
溶け合いたかった
最高の思い出も全部
何本目かのバスが二人の前を通過する
あなたはとつぜん気づいて顔を上げる
もう見えていないんだ、私たちって
手を握ると握り返してくる
とっくに物事を終えていた
安堵のため息をもらして空を仰ぐ
知らない星座ばっかりだってあなたが笑う