No.573

深夜のバス停
冷たい手を握ってる
この命が終わる時
瞬間を逃さないでいられればな

生きるって何かと物騒だね
髪に残る光跡がぼやけていく
ただそれを見ている
知らない言語を判読するように

何本かやり過ごした
ふと時計を見そうになって
袖口を引っ張った
あなたの頬は赤くならない

他人が網のように二人を追い込む
しかし目をくぐって逃げ出せる
先のことなんか考えないで
百年後に後悔するのかも

ぼくたちは考える
何をか教え合うことはしないくせに
考えてるってことを隠したりしない
そのせいで会話は少ない

殺すというのも一つの手だよな
間違った考えは優しくて
まるで正しい
たったひとつ浮かぶ灯のよう

もしどちらかが口にしたって
どちらにも正すことはできないだろう
こんなに途方に暮れているんだもの
こんなにも純粋であるんだもの

砕かれても星になったりしない
雪になって毎年降ることもない
埋め尽くすことも覆うこともできない
何よりそしてもう会えない

溶け合いたかった
最高の思い出も全部
何本目かのバスが二人の前を通過する
あなたはとつぜん気づいて顔を上げる

もう見えていないんだ、私たちって

手を握ると握り返してくる
とっくに物事を終えていた
安堵のため息をもらして空を仰ぐ
知らない星座ばっかりだってあなたが笑う

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