No.571

七年前に買ったレースが今日も窓辺で揺れている。本を、読みたくない。行間が躊躇い傷に見えるから。思い出すかもしれない。あなたに救いはあったんだろうか。町内放送が空に付箋を貼っていく。群れていた小鳥たちが散り散りになって虫を捕まえに行く。たまに付箋に衝突して墜落してくる。深呼吸をひとつ。これだけのために何百年もかかった。瞬きをひとつ。このために千年を超えてきた。どうしてちゃんと分かりやすくしておかないんだろう。見落としてしまうところだった。分かっているのか、見落として、しまう、ところだったんだ。すべて仮定でしょ。狡いんだから。あなたは呆れたように笑っている。この奇跡のためにいくつもの夜を越えてきた。数え方が分からなくなるまで夢を見た。ここも妄想の続きかも知れない。いつだって作り出せる体温は証拠にならない。なかなか醒めない。深い、長い、物語だ。甘い、眠くなるような、今となってはもう、欲しかったかどうかも、分からなくなるような、いっときの風だ。

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