No.566

ごめんね
ぼくは同じじゃない
きみの目で見るように
ぼくはきみを見ていない

本当はずっと前からだ
分からなかったんだ
知らなかったんだ
とか、冤罪を訴えるつもりはない

こんなにかなしい
さみしいことをしていた
ふたりもいて気づかなかった
こんなに虚しいことだったんだ

たくさんの好き
たくさんのごめん
たくさんの会いたい
たくさんのずっと

(うそつき、
似た者同士。)

先にきみだったのか
後がぼくだったのか
惰性で抱き合うので分からない
分からないままでいいじゃないか

取り出したキャラメルをしばらく見て
紙に包み直して
箱に戻して
完璧に隠蔽して
キッチンカウンターに置いておく

まるでいなかったみたいに
赤の他人みたいに
出会わなかったみたいに
初めてのように
終わりを知らない顔で

静かに靴を履く
そんな必要ないのに
静かに外へ出て扉を静かに締める
背中で音を聞く、しずかな終わりの音を

タオルケットの中で目を開ける
ぼくがそうすることを知っていた、
きみの瞳はいかにも朝方らしく潤んでいる
これが練習じゃないことに気づいて

利口なせいで、つらいだろうね
敏いがために、痛むんだろうね
ぼくたちは命をかけ合ったから
もしまた会えたら運命と呼ぼうね
あるいは皮肉と

嘆くまでもなく
最善は大抵不幸なんだ
不幸なものほど最善になるんだ
良い道を選びたいんじゃない
忘れたくない痛みでしか覚えてられない

(あのキャラメルに毒は塗ってないよ
うそつきかどうかは食べたらわかるさ
死ぬまで信じ抜けばいいだけ
うそつきを消すにはそれしかないさ)。