no.84

まだ渇いているって言う
何一つないくせに
足りないものなんか何ひとつ
ありはしないくせに

困らせることが好き
そう思っている自分を続けたいだけ
何もわからないころではない
すべてを敏感に感じ取っているけれど

通り過ぎる子どもの手が
やわらかな花をむしって歩く
いま自分の手を引いているひとが
薄暗い部屋でどうなるか
あなただけは本当に知っているんだ

飢えた目だけ通して
きみを見ていたい
唯一からはずれないで
ぼくの信じるものでいてほしい

西から東にかけて乳白色がのびる
誰かにとっては残酷な一日の終わりに
嘆きを許さない肯定がある
絶望を見放す広さが繋がっている

見渡す限り無関係な天空の下
数え方がきっかけで
いつまでももつれ合うぼくたち

満たされない目だけを通して
ふたりだけを置いてきてほしい

ぼくにはつくれなかった世界に
きみだけでは成り立たなかった夜に
神さまを呼べなかった日々に
微笑みかたを間違えた最初のころに