no.85

ほらこんなに安く手に入る
代わりのあるものだった
分解して転がせば
もう元どおりにならないけれど

代替性のあることが
希望だって言いたい
ほんとうは
そうじゃなくても
そんなんじゃ絶対になくても

名前を知ることも
視線を交わすことも
諍いになることも
手を繋ぐこともない

太陽が隠れていても
深い森や昏い海の底でも
みつからない雑踏の只中でも

浴び続けた活字が
ひとをずっと沈黙させたの
まぎれこもうとして失敗して
余計に異物であることを知るの

今日笑うたび
明日に持ち越された償いを考えた
許される時には罪名を
その罪名をつねに思い出そうとした

積み上げられたもののなかに
探しているものを求めても
まだ埋まらない空虚を確認するだけだった
小石のひとつもない夜道

まだ知らない
落としもののどこにもないことが
どんな意味をもつかは
まだ誰も知らない、いらない

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