No.557

誰もいない
灰色の空気をくぐる
街はそれでも輝いている
人類が絶滅した世界だと仮定する

初めて僕は息をする
すがすがしくて温かい
冷たくて心地がいい
公園のブランコも滑り台も

太陽が斜めに昇って影を作る
正体を見ずに影ばかり見る
ハロー、はじめまして。
あなたはこの街がスキデスカ?

たどたどしく装った人間
または、流暢に話す異形の機械
影だけでは判別がつかない
僕は返事をせず微笑み返す

気が違ったふりは少し甘い
舌の上にじんわりとひろがる
夜になると甘さは毒になるから
いろんなものを舐めては解毒する

同じ時刻どこにいても汽笛がする
なのでそれは幻聴だろう
だけど連想する記憶なんて持たない
ああ、自覚がないから幻聴なのか

お腹の底に少しずつ溜まった毒が
ようやく致死量を満たす頃
僕は計画を実行に移すことにした
丘の上の白い箱のような家へ向かう

ハロー、ごはんです。
甘くて美味しい、ごはんですよ。

ドアを開けると初恋が立っている
灰色した朝靄の中で淡く光りながら
ぼくはもうずっと空腹でいる
検分もせずにそれを頭から食べ尽くした

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