誰かが残した道しるべ
初めてそれを見つけたぼくは
道しるべを立てた人を恨んだ
おまえのせいだ
幸せだったのに
楽しかったのに
おまえが道しるべなんて作るから
自分が迷子だと気付いてしまった
あの人を抱きたいと思ったことはない
抱かれるあの人を見たかったんだ
あの人が誰かに愛されてやまない光景は
この世でもっとも美しいだろうから
純粋だったのに
本心だったのに
ひとつの道しるべが水を差した
広く見聞きなんかするんじゃなかった
手綱が緩んだのを敏く確かめ
ぼくの馬は駆け出した
草むらに投げ出されたぼくはひとり
この世界には隅っこがないことを知るんだ