No.543

届かない手紙を書いている
出さない手紙を書いている
宛先はきみで送り主はぼくで
手紙とは名ばかりの走り書き

ばかな勘違いしている人のほうが
幸せに見えることってあったんだ
いずれぼくもそうなりたいんだよ
思って、ガラスペンを手に取った

きみがいない世界は、
味気ないです。
つまらないです。
寂しいです。
あいたいです。

ここまで書いたぼくは笑い出し
おもむろに新たな白紙を引っ張り出す
今しがたの完成品は没にする
未完成でいられなかった物は没にする

きみがいない世界は
せいせいします。
快適です。
もし生まれ変わっても。
またあいたいと思えません。

書き終えた走り書きを三度読み返し
そこに嘘偽りのないことを確信する
いや、確信させようと試みる
そして見事に失敗をする

出さない手紙と出せない言葉
叶わない願いと叶えたくない思い
きみに後悔なんてさせたくないのに
真逆をぼくは強いているんだ