no.76

乾いた手がまた乾く
時間がたりないと言って
濡れた指がまた濡れる
時間があまりすぎると言って

あっけなく飛び立つんだね
いろんな理由で
さかさまになっていくんだね
ないものを反芻しながら

満ちるということ
それを知ったばっかりに
もう十分と言えずに
呪う相手も持たずに

めぐる季節に愛想を尽かされ
風のなかにいるみたい
海のなかにいるみたい
本当はずっと群衆のなかで思ってた

普通は怖い
それだけは言えずに
普通は悲しい
それだけが言えずに

交錯する
僕と君の不条理な時差
三角定規の鋭利な辺で
何と何を残して奪って目配せしよう

かみさまと上履き
カスタードと円周率
一年前に見失った新しいルーペ
夕焼けの赤が飲み込んだ無名の無数の擦過傷

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