No.516

捨てて行けたら楽なのに
捨てて行けると思ってた
どちらも部屋を出ないんだ
呼び止められるわけないのに

きっと同じ気持ちなんだろう
そのことに安堵してる自分が悔しいんだ
物分かりのあまり良くないぼくにだってわかる
話し合えば誤解が埋まることくらい

舌で転がすキャンディが勝手に砕ける頃
青空に赤色が染み込んで来る
どれだけ黙っていたんだろう
振り返るときみはまだ怒っていた

嘘をつくななんて無理だよ、
ぼくには隠したいことがある、
きみだってあるはず、
そしてそれは欺くためではない。

ぼくたちはやり方を間違うんだ
出題者だって分かってないんだ
そもそも謎謎じゃないのかも?
目の付け所がおかしかったんだ

弁解していると泣けてくる
次から次へと涙が出て来て
こんなことじゃないんだと
そう思うとさらに泣けてくる

混ざり合わない幸福を確かめたくて
調合した毒を互いに飲ませ合う
症状を伏せたままで匙を運ぶ
ぼくたちはたしかに幸福だった

涙の跡は初めて見る文字となる
握りしめた石に光が灯り
真っ暗の目に輝きが戻る
予報されなかった夕立ちだ

意味などこもってなくていい
愛していると言ってほしい
きみが正気を取り戻すその前に
雨がすべて洗い流してしまうその前に