月が満ち欠けすることほどに
不安定に当然に期待されずに
僕の魔物がまた目を覚ます
新しい優しさが届く前に
君のための泣く部屋を蹴って
雨の中に誰かの足音を聞く
ひとり、ふたり、みっつ、しにん
風の中に誰かの喉笛を聞く
いつつ、むっつ、しちにん、はち
数の中に誰かの残り日を聞く
ここのつ、とお、とお、とお
(十より先はまだ知らない)
何の問題も無いことを人前で曝けることが
何やら酷く恥に思われて奇形を謳った
満足な手脚であること満足な故郷であること
その裏切りは贅沢で甘美で毒性の高く
誰も誰も決して真似してはいけない類い
空から滴るかの日の茜した羊水
死は、
新しい優しさのために踏み躙られた
選ばなかった生は、
糾弾を恐れて遠雷に呪詛を紛らせる
天から迫る灰色した雲の塊
孕んだ不吉を僕へ転化したがって
地から湧き伝わる振動の嘆き
圧されてなお平気な僕をまるで憂えて