No.509

そんな顔しないで
どうせ明日には忘れられるんだから
ぼくはきみを慰めたい
だけど弱みに漬け込んでもみたい

記憶の断片がいま頭を埋め尽くしてる
トゲトゲしたものもあってチクチク痛くて
容量を減らしたいのに簡単に捨てられなくて
責任逃れで自分殺しは平気に行う、怠惰。

きみにとって良い人でありたかった
救世主でもなく害悪でも隣人でもなく
思い切ってどれかになれたら良かったな
嫌われたくない、そればかり優先した

きみは、強いよ。
ぼくはどんなことされても嫌いにならない
きみがこぼしたわがままに不平を言わない
そうすることで無難な世界を助長してても

守りたいものは守りたいと口にする
健全に長続きする秘訣だろう?
ぼくはむずかしいほうばかり選んで
いつか誰かに褒められたくて

荷物を捨てて逃げても良いよ
そう言いながら知っていた
きみは逃げない、逃げられない。
知り尽くした手の内を一個一個明かしても

つめたい朝と生ぬるい夜
血で洗い流した空がまた白くなって
悪びれない生き物を大量に産み落とす
どうりできみは美しく、ぼくは明日も生きづらいのだ