暗闇でも識別ができるのは
血の味は視界より鮮明だから
ひとつずつ色の名前を忘れていく
最後に残すものについて議論する
時間を振り払って不詳の生き物たち
不完全な縫合痕にも雪は積もる
きみの掌、ぼくの掌
結晶の崩れるまでの僅かな差異が
それに気のつくことだけが
ふたりきりの証明であり
明日はまだ何者でもないことの優しさ
頬杖
眉間のメス
軽口
生温い抱擁
初恋は愛を拒んだ
きみの髪がぼくの視界を遮る
そのために伸ばしたんだろう
膝だと言ったら林檎だと種明かし
夜をいくつも越えていけそう