ずっと舐めていたら横取りできそうだね、空からあの月。素直に思ったけど企みを気取られたくなくて黙っていた。僕はやっぱりつまらないヤツになってしまうことを嘆きながら頭の中ではもう舌にのせている。願ったとおりに手に入れられることが必ずしも幸福ではないと、きみを見ていればわかるよ。だけどそれを言ったら美点が消えてしまうよね。本当のきみが不幸であることを誰も知らないときみがいまも頑なに信じているということ、その姿が素敵なんだ。僕は語りかける。追憶の中でなら。妄想の中でなら。きみは首をかしげる。そっぽを向いている場合ではないよ。限りが無いわけではないのに。完成させたくない二人の夜は楽園から程遠いから僕は、みんなの知っている楽園がまやかしであることを知った。それを楽園と呼びたいがための孤独があるってことも。心配しなくても、もう知っているよ。