no.63

笑顔で話してた人が相手と別れて踵を返した途端にシュッ!と素の真顔に戻ることを、僕はもうそろそろ逆にとらえなければならないのだと思う。別れた途端にどうでもよくなったというのではなく、もともとその顔である人が、相手のためにずっと笑顔を見せていたのだと。それは他者への不可欠な心遣いであり、そういった他人の多面性を、その境界を見つけるたびに、いちいち世界に傷つくのではないよ。そういうのを続けるのは、よくないんだ。自分から生じた恐怖を第三者のものと置き換えて虚構の中へ投げ込んでしまうことも、揺れ動いていないふりをして誰かの傷を代理で負うことも。僕は善人ヅラした悪党だ。僕の血は僕の傷からしか流すことはできない。そのことをまっすぐに受け容れることは、君の血が君の傷からしか流れることがないということを身をもって知ることでもあるのだから。

(わかりたいよ、)。

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