No.484

ぼくがやさしいはずだった
夕暮れの鮮やかさは恐ろしい
誰も深さに気づかないで
センチメンタルに言う、きれいだね

希望の消えていくことと絶望は別物
ちょうど胃袋が分かれているように
つまりそんな生き物のようにだ
やり過ごした夏をきみが拾い上げる

銃口を向けられて笑ってしまったのは
その向こうにきみが見えたからだよ
指先が、肩が、その目が言うんだ
ぼくを今でも愛しているって

暴力に等しく唐突に好きが始まったんだ
誘いかけてもつれなかったくせに
きみは戸惑いながら新しい恋にすがる
切り離された人魚の尾びれが浮いている

かなしいほどに美しい
きみも無傷ではないから
ぼくを消しながら泣いているから
誰の目にも映らない涙を流すから

この海には溶けている
みつからない命、放られた初恋
言えなかった真相、暴き損ねた秘密
一度でも気づいてしまったら

夢の行き先は必ず同じ宮殿だ。
きみが出会う、
ぼくと出会う、
純潔に疲れて銃撃になる。
それを知らないぼくたちはまたここで出会う。