no.480

夜の海です
ぼくが呪いをかけたいのは
たっぷり飲み込んでしまうでしょう
これまで数々の言葉が沈殿しています

教室ではヒーローです
大人をあざむくことは容易です
彼らは見過ごしたがる、いつだって
あるいは、だまされたがるので。

ちいさく切断をします
そしてでたらめにつなげるんです
みんな適当に合わせてくれます
ぼくが頭をひねる必要はありません

だけどひとりだけ違うんです
ぼくのことを違うふうに見るんです
小さなひかりのようでいて
それがどういう意味かがわからない

ぼくは頭がいいのではなく
他人に考えさせないだけのこと
狡猾というのとも違うのでしょう
だって何も企ててはいないのだから

だけどあなたはそうは思わない
ぼくの姿を目で追っている
たまにこちらも見返して
視線はふと離れるのだけど

それはときどき甘い
ぼくは楽しみにさえした
夏休み前の通学路は蕩けそうなほど
あなたの背中が揺らいでる

ぼくは追いついて声をかける
初めて名前を呼んだときの表情で気づく
あなたはぼくを許しはしない
理由なんか明かされない

一度ずつ撃ち抜かれて蘇生する
あなたはきっと捨てて行く
いつかボロボロになって
ある日ふと自分を傷つける気がする

予感のために倒れたりしない
順序どおりに恨ませない
ぼくの血で汚れるのはぼくでいい
こんなものであなたを汚せない