no.474

植えつけたわけじゃない
少なくとも不本意ではなかったはず
きみは一縷でも望んだんだ
遭難者にだけ見える幻の国だ

ひとつ認めて欲しいことには
自分を愛すことなど到底できない
でなければここにいなくてもいい
ぼくの役目を終わらせて欲しくない

宇宙の話をするよ
そのあとで草についた露の話を
読みかけの物語を続けさせたり
行ったこともない異国の風景を

どんな体験も想像力に及ばない
そこには切実さが備わるから
あのひとには勝てないと思う
きみは囚われすぎている

生々しさが人を救うなら
とっくにぼくが到達している
きみの目は遭難者のそれだ
手が届かないことで安堵する

まったく不健全だよ
傷だけがきみの時間を今につなぐ
それはぼくの敵視するあのひとが
最後にかけたきみへの呪いでもあって

忘れるに任せるしかない
時が進む以上は
だけど雪は降り続いて
ぼくが抱くきみへの思いさえ
なかったことにしてしまう