知らなければよかった
知りたかったのは本当だけど
いまそう思っているのも本心だ
ぼくの心は棺よりも広い
透明の糸が絡まるんだ
目の前で、そう、この目の前で
指は動かせて触ることもできるのに
絡まりをほどくことだけできない
氷を削る優しい音が
悪夢からぼくを匿おうとする
だから言ってやるんだ
これは悪い夢なんかじゃないよ
あれも現実
きみもたしかにここにある
問題は溶けてなくならない
誰かがうまく隠しているだけ
きみはきっと間違っている
ぼくもあまり正しくはない
ふたりして選ぶことをやめただけ
正しさで救われるものはないから
砂浜で疲れて眠るこの物語は
ガラスの破片からは掘り出せない
どんな音楽にも慰められたくない
沈黙と抱き合って眠りたいだけ
どうか信じないでほしい
美しいものが美しいというだけで
絶望はひなたにも訪れる
とらわれた人にはそうと気づかせずに