no.470

知らなければよかった
知りたかったのは本当だけど
いまそう思っているのも本心だ
ぼくの心は棺よりも広い

透明の糸が絡まるんだ
目の前で、そう、この目の前で
指は動かせて触ることもできるのに
絡まりをほどくことだけできない

氷を削る優しい音が
悪夢からぼくを匿おうとする
だから言ってやるんだ
これは悪い夢なんかじゃないよ

あれも現実
きみもたしかにここにある
問題は溶けてなくならない
誰かがうまく隠しているだけ

きみはきっと間違っている
ぼくもあまり正しくはない
ふたりして選ぶことをやめただけ
正しさで救われるものはないから

砂浜で疲れて眠るこの物語は
ガラスの破片からは掘り出せない
どんな音楽にも慰められたくない
沈黙と抱き合って眠りたいだけ

どうか信じないでほしい
美しいものが美しいというだけで
絶望はひなたにも訪れる
とらわれた人にはそうと気づかせずに

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