no.61

就寝前の習慣。星空なんて言葉が幻想でしか語られなくなった新しい街の新しいとばりの中で。今日一日に傷つけた人の数だけ息を止める。明日また目覚める保証もないのに祈りの言葉を思い出す。救われないものは、救われないものは、実体の無いものに夢を見てばかりの生き物ばかり。おまえはいつか呪うだろう。いまここで僕を見捨てなかったせいで。忌まわしい色に染まることに怯えることなく、汚れたこの手を握って笑いかけたせいで。天体は運命を運びながら煌めく。人の目に映らないところで。疑惑の届かないところで。割り振られる番号も不足した死者ばかりの境界線上で。ふたしかな右と左。あいまいを思い出す光と影。記号を捨てた僕とおまえ。似ているところも似ていないところも、誰からも指摘されることのなかった生涯。互いに抉りあった心臓の正体がゼンマイ仕掛けだったとしても、未知を追放したことで安堵はもたらされるんだ。そんな夢。ただの夢だ、そんなこと、わかっているんだ。種も仕掛けも無い、この今以上のいつかは無いって。奇跡って言葉は使いたくない。ただ、わかっていたんだ。忘れたふりもできないくらい。毎朝、毎晩。星を拒んだ瞳の奥で。懐かしい唇が目蓋にふれる。柔らかくはない。だけど冷たくはない。さみしさは消えない。だけど平気だと思える。奇怪じゃなくてもこのまま深く許されてくれる。溶け合えそうだと錯覚するほどの微睡みに誘い込んでくれる。何度も、何度も。

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