ひとつの時代が終わるころ
ぼくたちは未成年だった
新しい元号が控えて
世界は勝手にあわただしかった
忘れ去られるのはかんたん
自分をうんと愛するか
その逆を徹すればいい
他人を傷つけても平気でいていい
出窓に天使がやってきて
いけすかないな
と、言うんだ
たしかに、そう、言ったんだ
青のような赤のような目は
ときどき色を変えながら
ぼくの記憶にあるすべての
これまで会った人々の顔つきで
お腹を切っても生めない
弛緩せず、埋められない
森に隠した種のよう
わかるひとにはわかってしまう
無責任だよ
何も奪わないなんて
成就しないまま
最後の夏がまた始まる
会いたい
会えない
会ってはいけない
愛するよりほかにないから
朝顔のひとつひとつ
夜霧のひとつぶひとつぶに
ぼくの悔恨が宿ってひかる
繰り返しではなく蘇生なのだ
そのたびに殺りくなんだ
破滅し呪詛を撒き散らす
無秩序に白い花を並べられて
泣きながら産まれたんだ