no.449

ぼくを見捨てなかったあのひとが
今もどこかでしあわせでいるといい
ぼくのことなど覚えておらずに
だれかの横で笑えているのだったらいい

と、

そういうことを
願うことのできる
ぼくを願った
でももうやめた

ぼくはのみくだすことができない
こうもたくさんのぬかるみを
ジュースのように飲み干せない
臓器はあくまで生ものだから

綺麗になれない
花ではないから
歌ってばかりいられない
鳥ではないから
撫でるだけでみたされない
風ではないから
夜が来るまで待ったりできない
月ではないから

似てしまうのが嫌で
姿をあらわすことができなくて
毛皮に隠れて恥じてもいるんだ
両立してしまう感情のために

たまに平気なこともある
だけど反動で嵐がくる
どんなにあたたかいだろう
どんなに人に優しくなれるだろう

きみがきみだけのものならば
せめてきみだけのものならば

雪に溶けない陽に蒸発しない
そんなぼくのことも
ぼくも
すこしは好きになれただろうに