no.426

夢ならよかったのに。あなたがそう感じながら目を覚ます朝にはそばにいたい。優しさのためじゃなく、弱みにつけこむために。

白くぼやけた世界が迎えに来るんだ、金魚すくいのように、連れ去ってしまうんだ、あの夏の花火みたいに夜空の鳥を蹴散らしながら、この時間はぼくのもの。

オートバイで走り去るものがどうして自分じゃなかったんだろう。誰もいないところへ行きたい。生きていけないくせに。じゃあ生きなくてもいい。生きていなくても、いい。

ささやく声が雑音に変わって、自由の記憶の残酷さを知るだろう。ぼくがいばらの茂みに手をのばして、ちょっとの傷なら気にもとめなかった理由を、知るだろう。

眠りは肌を冷たくする。だけどそれがまたあたたかく灯ることを分かっている。期待とか未来未満の確実さで。空にはまだ雲もない今、ぼくのわがままが少しだけきみを救う。

誰にも理解されないんだというきみの思い上がりが、ぼくを少しだけ後押しする。言葉未満の始まりに、骨を焼いた後の灰のように寝たふりをしている。ちいさな蘇生を繰り返し味わうために。