no.53

変われないものは変われない。破れない殻は破れない。私達は嘘をつかずに、大切なものを犠牲にせずに、それでもいろんな景色を見ていたいね。過去を呪わず、未来に託し過ぎず、今を今と呼ぶこともなく、小腹を満たすために口元へ運んだおやつにほんのちょっと罪悪感を覚えながら、でも、咀嚼して嚥下したあとはもう、週末見に行く映画のタイトルを決めていたいね。赤い手袋に白い雪が積もるってロマンスがなくても。白い雪のなかに赤い手袋を落とすってハプニングがなくても。大きな事件に囲まれながら小さなことを騒ぎ立てて大笑い、難解に考えすぎた世の中の仕組みが実はあっけないほどシンプルで幼稚であったことに気づいて脱力し、血を流すひとも喉を乾かすひともみんな一律に比較をせず、足りないものを足りないんだと、叶わない願いだって、あってしかるべきであって、むしろそれがために努力が輝くんだと、途方も根拠もなく信じていたいね。裏切られてもあくびは出るよ。電池切れのリモコン。わざわざ立ち上がって電源を入り切りする。平均寿命までの年月を秒で換算する。そのために初めて話しかけたSiriが優しかったり。広げた世界地図の上を空想で旅する、だけどイメージが湧かなくて適当なことを言い合う。神様を信じるひとも子供を無垢と信じるひとも、同じくらい平等に騙されているし幸せなんだ。あなたがどんな不幸を知っているっていうの。

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