no.414

言いたくない。きみだけが頼りだ。そう言えば多くのことを投げ打ってぼくを優先するんだろう。切り札にとってある。そうじゃなかった時を迎えたくなくて。言葉が時々は意味をなさないことを知っている、知っていた、知らずにいられるはずがなかった。役割のないものに愛着を覚えていられるよう、朝の水色、冷蔵庫のしなびたレモン、昨日の泥水が乾いたスニーカーの靴紐、取り替える指先、なんでもない時に泣いてもきみは見ぬふりができる。ぼくが不意に他人のようになってもきみはいつだって思い出させることができる。さざ波と緑。まるい太陽、はためくフラッグ。世界は広い。腕の中は狭い。ぼくたちは窮屈でときどき喧嘩をした。夢のようだね。幻のようだね。人と人が通いあうのって。何をしても奇跡になるよ。捨てきれないものを抱えて、だけどいつかさよならをするのかな。この不安も抱えたまま生きていく。今日が明日に笑いかける。どうだ、未来、今がうらやましいでしょう。