no.47

こんなことになるくらいなら。続きは言わない。中途半端に優しいんだ。新しいカーテンの向こうで飛行機雲がぼやけていくよ。見なくたって分かる。見えなくたってそこにある。約束はことごとく破られて、きみのきらいなケーキにのってるイチゴみたいにぐちゃぐちゃにされたって、文句は言えないんだ。出会ったんだから。落ちたんだから。失って初めて気づく欠落も、知って初めて分かる痛みも、怖くはない。夜空の星座が変わるみたいに、ちゃんと感じている。怖いことが起こることも奇跡だ。きみといると僕は海中にいるみたいだった。全部が全部、まだらに光っていて、周りの音はあまり聞こえなくて、眠っていたってどこかへ運ばれていって、戻ることも進むこともありうるんだと知った。好きになるとは時を止めることじゃないんだね。時が止まっても止まらなくても、どうでも良くなる感覚なんだね。誰かの真似をして器用じゃない手つきでココアをいれてくれなくたって、嫌いになんかなるもんか。こんなことになるくらいなら。でも、こんなこともないくらいなら、何を遂げてたって、死ぬ時には必ず物足りなかった。たくさん光があったんだ。昼よりも真夜中に。きみといると。僕だけを見ている。