no.399

声を聞かせてと言って。手をつないでと言って。ていねいだった頃を思い出して。忘れないでと言って。花束なんか要らないと、星も月も見えなくていい、太陽がのぼらなくても、もうひとりで泣いたりしなくて良いんだよって、言って、ねえ、また人間みたいに。ぼくたちまるで欠陥のないところが取り柄みたいで、だけど疎ましくも感じられて排斥を免れなかった。不安定であること、哀れだと思うよ。そこからたくさんの作品が生まれたんだろうなとも思う。整然としたものは、苦手?理想を追い求めるくせに到達することにためらって出した手をまた引っ込めるの。臆病なほうが可愛いとでも思ってるの。くだらないって言われたいの。ぼくも、きみも、冷たいひと。優劣じゃない。現象の話をしている。つめたいね。酸化する言葉でまだここにいたって気づくくらいの。でも時々なまぬるいんだ。錯覚のたびにもう百年、延命してしまう。これはそういうゲーム。勝って終わらせられない。あと少しって何度だって思ってしまうから。ふざけているよ。バグなんだ。ぼくが時々つめたくて、きみが時々なまぬるくなるのも。生きてるの。ううん、死ななかったの。それだけなの。ちゃんと尊いでしょ。もう一度大切にしてね。

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