no.371

川を流れる水よりもそれに映る星の光よりも取り返しのつかないこの時間をどうか大切にするといい。あなたにはまだわからない。それがどんなにしあわせなことか。幸せはいつも失われたときに輪郭を持ち始める。だから大抵はみんな幸福だった。太陽と月のうわさばなし。おたがいのことをおたがいよりも知っているのにね。それを直接伝える手段はない。風やこどもに委ねるだけ。信頼が生まれて絶対の存在にも愛嬌が宿る。備わらずに欠陥となった部分は絶好の注ぎ口だから。あなたはそのまま持って生きておくといい。きらいなところ。にがてなこと。どうしても克服のできなかった、あなたのよわい部分。それなくしてどうしてふたりになれるだろう。会話の意味。沈黙の心地よさ。つむじをじっと眺める。長い夜も短い朝も好きになれる。靄の中を手探りで歩いたって怖くない。あなたがいつか出会えるよう、ぼくはまだ土の中で祈ってる。その時は必ずあると信じてる。祈りとは信じること。願いとは一方的な約束。たとえばあなたが輝かなくても、たとえばあなたがぼくを忘れても、それはもはや関係のないこと。あなたを見送っている。あなたを慕っている。本当にありがとう。愛は絶えなかった。

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