no.355

正解しか言わないきみが、あなたが、ぼくが、嫌い。きらい。すみれ色の音楽が今日も人々の隙間を満たしていく。だから言葉なんかもう要らないよねって誰かがささやいた。もしくはぼくの頭がそうひとりでに思考した。神様の島に住んだことがあるよ。黄色の犬と、ふわふわの食べ物。フリルのスカートと枝のようにまっすぐな脚。百年でも千年でも超えてみせる。だって時間は最初から無関係だった。食べ残しから永遠に追っかけ回される運命。疾走する彼らにはこの景色が見えない。種が落ち花は咲く。実はまた結んで天を仰ぐ。夢だって疑ってもそこにある夢。ぼくしか愛することのなかった人々が凪に見え隠れする。透き通ったしゃれこうべ。いさり火に搔き消えることもない。何を幸せと呼ぶかは言葉を持つものの特権。何を愛するかは消えゆくものの特権。さあ目を開いて。