no.354

さよならが言えなくて殺したんだろう。わかるよ、栗色のキャラメルが欲しかったんだ。美味しいよね、あれは。どの国の何にも似ていなくて。自分以外は順調に混沌を調教して、時たま雪景色にまぎれこんでは簡単に生まれ変わって見せるんだろう。懐かしい風景を見かけても地名思い出せず、さみしさだけ吹いているような。言ってしまえばそれだって錯覚。昨日まで一緒に絶望してくれてたあの子も勝手に夢中になれるものを見つけちゃうしさ。いやになるよね。あたりまえだよ。チューリップのスカートよりひろがる宇宙があるんだってさ。嘘だろって言いたいよね。たぶん嘘だよ。なんにもない両手でいくつまでならキャンディーを盗んでいいと思う。ねえ、教えてあげよう。白い犬と黒い犬が静かに審判を待っているよ。彼らにも教えてあげよう。脇見するほど純情じゃない。もう君しか見えない。生き返るために凍てつく世界。夜が叫んでいる。聞こえないふりしたっていいよ。暗号にこめられた真相。なるほど、僕たちが少しも似ないわけだ。