no.350

戦いの途中でふと思った。もうやめたいんじゃないかって、ぼくはこれを、もうやめたいんじゃないかって。振り下ろす刀の前に敵はない。満月だって半分にできた。溶け出した卵の黄身はこんなところに隠れていた。飲み干した姿を湖面が見ていて獣みたいだった。名前のつかないうちは傷もつけられなくてだからたくさん瞳を見たよね。だって君たちに教えてあげたかった。ここじゃないんだよって。もちろんそれはぼくのひとりよがりでそんなこと続けていればいつか誰もいなくなるって簡単にわかることだよ。泣いているのかなと思ったらさっき付着した血のぬくもり。生きているものから逃れられない。もう一度ファンファーレが聞こえ、殻を破って生まれるぼくがまた同じことを繰り返す劇場。囚われのさよなら。一口分のスラングより軽いばかりの。もういいや、何度だって始めちゃえ。反旗まがいを踏み倒し。