no.339

怖かった?
ねえ、怖かった。
それはどんな色をしていた。
どんな形、手ざわりだった。
まわりの人はどんな表情をしていた。
それから、きみは。
きみは、どんな気持ちだった。

広場には笑われながら踊るピエロ
向かいには生まれつきのプリマドンナ
ぼくには見える
ヴェールに匿われていた姿が

怖かった?
ねえ、どんなにおいがするの。
どんな声を上げるの。
誰かの名前を呼んだり、祈ったりするの。
彼らはきみを睨むの。
それとも命乞いを?
きみは、怖くなかった?

騒がれてはいけなかった
カナリアの喉を締めた
ぼくにあの音楽を聴かせないよう
だけど死んでまでぼくから逃げないよう

怖かった。
ああ、とても、怖かった。

ハンバーガーを包んでいた紙より軽いんだ
食べ損ねたフライドポテトより柔らかい
その時どんなに綺麗な夕焼けだって関係ない
みんなの神さまはいつも遅刻をする

どうして消えないか
どうして消えてなくならないのか

ぼくの行いは後世の娯楽になるだろう
きみの詰問まで含めて
すでに誰かの物語を生きている
ここでは詩だって読み飛ばされる台詞になる

ご冥福なんてあるわけない
葬いは参列者の井戸端会議
念入りだった化粧を落としたら誰ももう
ぼくを捕まえられず罪は贖われることがない