きみの言葉に傷ついたことを夜になっても認められなかったのは、もっと好きになりたいという気持ちの裏返しだった。過度な期待と無駄になるかもしれない思いやり。奪われるばかりで枯れてしまう気がしていた。どうせすべてが自分の感じ方次第だったとしても。思い出を頬張って涙がこぼれるのをこらえていた。誰も見ていない。誰も気にも留めない。分かってる、それくらい分かってる。解体されるぼくの感情。同じものを再現することはきっとできない。だから今がいちばんつらい。早く何もかも分からなくなりたい。失われたものを求めているころが一番幸せだったかもしれない。大人は教えてくれないけど。嫌いになれないものが離れていくのを眺めていることが一番の幸せだったかもしれない。子どもはそれでも目を逸らさないだろう。車窓の内側と外側で、どちらが残されているのか考えてみる。つなげなかった手と手はそのせいで永遠にあったかいんだ。忘れていいよとほほえみながら、忘れないでと呪いをかける。淡い紫色が差し込むホームで。時間をかけて編まれた名前が今、けむりのようにほどけていく。