no.333

ぼくは一冊である
きみに読まれる
ひとつの詩
一冊の本

きみの時間を食べます
いのちを蝕みます
ぼくといるときみは
他のことを忘れてしまう

ぼくには血が通っていない
きみが読んだときに
ぼくは生きることを始める
きみの血になって
きみと生きていける

教室の隅で
まっくろな瞳で
さみしさを忘れて
西陽で少しまぶしそうだった

きみの手はぼくを支えた
熱い涙がこぼれていた
ぼくの内側からは決して出ることのない

それはどの本に書かれている
傑作より純粋な一つの結晶
きみがつくった初めの詩
死なないぼくには絶対にできないこと