no.331

一度じゃない。何度もだ。思い出さないんじゃない。分かっているのに、だ。ぼくは繰り返し捨てるし捨てられる。傷つけられたことは記憶に残さない性分。だから成長しないんだよってきみは笑うだろうけどそんなのお互い様だろう。むきになったりしない。成熟することで失われる美、視界を過ぎる割れた窓の街、重ね塗りの夜、同じものに包まれていることは危険でしかない、変わりたくないの、だったらなおさら動かなきゃ、シェルターはいずれ突き止められる、甘やかしてくれるだけの毒なんかない、だったらあいつを甘やかすんだよ、ファニー、昔住んでた家が燃えている、ちいさなあの子の墓場、骨は白いままで砕けることも許されない、シット、机の上を片付けて、禁じられた遊びを順番にこなしていこう、見つめられるなら見つめ返せばいい、それが不安になるくらいに、赤が足りない、じゃあ青を買ってくるよ、相対的にね、この世界から青が減ったらきみの赤は増えるだろう、ねえ、スイート、今だってそうだろう。愛なんて語らないで。いちばん遠いあなたで。破片と花弁のベッドルーム。利き手を奪われた状態で、なんという狂気の沙汰。